【2歳馬評価】明瑞新山の眼【6月11.12日分】

 

6月11日(土)

 

 

 

 

東京5R

2歳新馬《芝1400m》

 

 

【勝ち馬】ロッソランパンテ

父 エピファネイア

母 マウロア(キングカメハメハ)

 

 

 

【血統】

 

父エピファネイア。
早くもこの世代2頭目の勝ち上がり。

仕上がりが早くそれなりに丈夫で今のところ早枯れでもなさそうと、ぱっと見はパーフェクト。

ところが、ダートでの勝率は芝の半分ほどと結果を残せていない。

まだまだ世代が浅く観察が必要だが、同じく芝の勝率のほうが高かったディープインパクトを見ると、こちらはダートでの勝率は8.6%。

対してエピファネイア産駒のダート勝率はなんと5.4%なのだ。

これは騎手で言うと先週までの勝浦騎手の勝率と同じ。

これを見てダート替わりのエピファネイア産駒、あなたは買いますか?

 

 

母マウロアは競走馬としては地方競馬で3勝を挙げた程度。

だが、特筆すべきはその血統。

曾祖母ビスクドールの姉がトゥザヴィクトリーと言えば誰もがすぐイメージできるだろう…名門フェアリードール系だ。

そのトゥザヴィクトリーの子孫はGⅠ勝ちこそないものの、トゥザグローリー・ワールド兄弟を始めとしてGⅡ6勝GⅢ4勝を挙げているが、ビスクドール一族とて負けてはいない。

京成杯を勝ったプロフェット、京都2歳S馬クラージュゲリエ、クラスターC勝ちのオウケンビリーヴなど活躍馬がずらり。

近年では昨年のJBC2歳優駿の勝ち馬アイスジャイアントを輩出しており、勢いという点ではこちらかもしれない。

ドリームディールから分岐したヘバの一族からもCBC賞を勝ったヘッドライナーや武蔵野S勝ちのタガノトネール、デイリー杯2歳Sを制し障害場としても活躍したタガノエスプレッソが出るなどやはり活力のある血統だ。

 

 

ちなみにエピファネイアの活躍産駒は総じて一族に重賞勝ち馬がいる血統の持ち主。

そういった意味では成功サンプルに当てはまっていると言えるのかもしれない。

 

 

 

 

【レース内容】

12.8 – 11.9 – 12.2 – 11.8 – 11.3 – 11.5 – 11.6

 

 

スタートは良くもなく悪くもなく。

そこから促してポジションを取ると、やや掛かり気味の追走となる。

ずーっとフワフワした走りで集中力に欠ける走りが続き、直線で鞍上が進路を決めてGOサインを出しても右に左に飛んでいきそうな粗削りな走り。

最後は外へ外へ逃げる走りをしながらなんとか押し切っての勝利。

 

 

走りそのものが粗削りでまだまだノビシロがありそうな感じ。

ラップ的には後半はそれなりに締まっており、この流れで後ろから追い込んで上位に食い込んだコンエネルジアは次走注目してみたい。

 

 

【評価】☆☆☆【☆3】

 

 

 

 

 

 

中京5R

2歳新馬《芝1600m》

 

 

【勝ち馬】マラキナイア

父 ジャスタウェイ

母 カウアイレーン(キングカメハメハ)

 

 

 

【血統】

父はジャスタウェイ。

ハーツクライの後継として期待され、それに応えるように初年度産駒からヴェロックス・アドマイヤジャスタ・アウィルアウェイをクラシックに送り出した。

しかし、それらがその後伸び悩んでしまったことと、ダノンザキッドの登場までめぼしい産駒が出なかったことなどから2020年には社台SSから都落ち。

そのダノンザキッドも、ホープフルSを勝った後はパッとしない成績で今こそ種牡馬としての真価を問われる時期と言える。

産駒成績を見ると、完全に劣化版エピファネイア。

芝のほうが得意だが勝率はさほど高くなく、ダートはさらに落ちるという塩梅だ。

一応マスターフェンサーとヴェルテックスが気を吐いているのでダート替わりはエピファネイアよりはマシと評価するべきか。

雄大な馬体で見栄えがするが、切れ味がなく持久力特化。

本日は芝だが切れ味がなさすぎてダートで花開く、というパターンが多いのかもしれない。

 

 

母は競走馬としてターコイズSを制したカウアイレーン。

一族にはスプリンターズS・安田記念を制したブラックホークやNHKマイルカップ勝ちのピンクカメオ、米芝短距離チャンピオンのオブヴィアスリーなどがいる。

 

母としても先日サウジアラビア→ドバイで重賞を連勝したステイフーリッシュを送り出しており、本馬にも期待がかかる。

 

 

 

【レース内容】

12.7 – 11.3 – 11.9 – 11.9 – 11.9 – 11.5 – 11.4 – 12.1

 

 

五分のスタートから促して3番手。

道中それなりの流れで逃げる前を離れた位置で見ながら競馬を展開する。

3角前から徐々に間隔を詰めていき、直線では粘るレゾルシオンを捉えて優勝。

ところどころ追走にてこずる場面も見えたが、それは新馬ということでご愛敬。

直線でも1頭だけ手応え良く突き抜けており、完勝といえる内容だった。

時計面でも優秀で、新馬戦としては好パフォーマンスだったと言えるのではないか。

問題は馬体面。

やや非力な印象で、これからの成長が待たれる。

レースレベルとしてはここまで行われた中ではかなり高い部類。

上位馬はすぐに勝ち上がれるのではないか。

 

 

【評価】☆☆☆☆☆【☆5】

 

 

 

 

 

 

 

函館5R

2歳新馬《芝1000m》

 

 

【勝ち馬】ニーナブランド

父 ダンカーク

母 カルディア(センノロブロイ)

 

 

 

【血統】

父ダンカークはアメリカ生まれ。

競走馬として大きなタイトルを獲得することはなかったが、わずか5戦のキャリアの中でベルモントS2着、フロリダダービー2着の実績を残した。

その母シークレットステータスはケンタッキーオークスの勝ち馬で、父が多数重賞馬を送り出しているアンブライドルズソングという血統背景からも期待を背負って種牡馬入り。

ファーストクロップからGI馬を送り出す活躍で北米2歳新種牡馬リーディングを獲得し、シャトル先のチリでもGI馬を輩出する等の実績も作り、2015年から日本で種牡馬入り。

初年度は150頭の繁殖牝馬を集める人気ぶりだったが、次第に減少し、現在は60頭前後となっている。

その原因はやはり活躍馬がいないことで、ここまで中央競馬での重賞勝ち馬は0頭であり、平地競走のOPクラスの勝ち星もわずかに1。

つまり、大物産駒を期待してはいけないし、POG等で指名するのは100%避けたほうがよい種牡馬と言える。

産駒は芝の勝率が6%、ダートの勝率が7%とややダート寄り……短距離のイメージを持たれがちだが、近年は中距離以上での活躍馬が多いといった感じだ。

 

 

 

 

母はカルディアは門別で1勝した程度。

だが、血統的には世界的名血バラード系に属する超良血。

本来はダンカークなどを種付けしてる場合じゃないレベルの血統背景の持ち主だ。

そのバックボーンを証明するように、送り出した産駒全頭が自身が未勝利だった中央競馬で勝ち星を挙げている。

もう少しスピードのある種馬をあてがわれれば面白い繁殖かもしれない。

 

 

 

【レース内容】

12.3 – 11.3 – 11.4 – 11.2 – 11.3

 

 

揃ったスタートから押してハナへ。

そのままテンポよく逃げ足を伸ばしてあれよあれよと逃げ切った。

内容としては典型的な短距離の競馬で、4角で3番手以内にいた3頭がそのまま上位を占めた。

ラスト3Fとも11秒台でまとめたのは水準程度の評価をするべきか。

 

 

 

レースを見ていて目についたのは3着イティネラートル。

ゴール前あからさまに追うのをやめてハナ差3着入線。

手綱を抑えて減速したわけではないので制裁なしだったのだろうが、馬券を買っていた人からしたらたまったもんじゃない。

次走注目・・・ではないがさすがにこれで制裁なしです3着確定です・・・では納得感がない。

 

 

 

 

【評価】☆☆【☆2】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6月12日(日)

 

 

 

 

 

東京5R

2歳新馬《芝1800m》

 

 

【勝ち馬】オンザブロッサム

父 ラブリーデイ

母 スターズバース(タートルボウル)

 

 

【血統】

ラブリーデイの3世代目。

キングカメハメハの後継として決して期待されていたわけではないが、100頭以上の繁殖を集めた同馬。

これまでのところ目立った活躍馬は出ておらず、種付け数も年々減少。

現状が続くと5年後には廃用になっている可能性が高い。

産駒は芝ダート問わず走れるが、とにかく勝ち味に遅く、所謂善戦マンを量産するタイプ。

どこかで父のようび一皮剥ける仔が登場することを願うばかりだ。

 

 

 

母スターズバースは中央1勝。

 

引退後は社台ファームで繁殖入りし、最初の産駒が本馬となる。

近親に重賞勝ちこそないものの秋華賞3着他重賞で6度の2.3着があるプロヴィナージュや、札幌2歳S3着のエデンロック、北九州記念2着のナリタスターワン等がいる。

 

 

この勝ちきれない一族に善戦マン量産型の父のカップリングで生まれた馬が初戦からあっさり勝ち上がるのも皮肉めいたものを感じる。

 

 

 

【レース内容】

13.2 – 12.1 – 12.9 – 12.7 – 12.4 – 11.9 – 11.4 – 12.0 – 11.9

 

 

発馬五分から二の脚の速さでハナへ。

 

そのまますんなり行く展開になるかと思いきや、外からトーセンノヴァが主張したため控えて2番手に。

前が離して逃げたことで実質逃げに近い競馬になり、直線までじっくり我慢。

ラスト500mで気合いをつけられるとやや内にモタれ気味になりながらジワジワ加速。

残り1Fで先頭に立ち、大外から強襲したダノンザタイガーを抑えきって優勝。

1000m通過63.3というスローペースなのに大逃げの形になる特殊なレースだったが、離れた2番手を極めて冷静に立ち回った鞍上の好判断。

ざっくりとラスト3Fの構成は11.2 – 11.0 – 11.9といったところだろうか。

最後まで脚色衰えず馬も良く頑張った。

ただし、上述のようにスローペースの中の大逃げという謎展開になったということは忘れてはならない。

逃げ馬の5F通過が63.3で、そこから約5馬身置かれた場所にポジションを取っていたと考えるとこの馬の通過は64秒前後。

超スローを逃げて押し切った、と考えればここで大きく評価するのは少し躊躇してしまう。

ひとまず☆3評価で次走を見て再度評価しなおすことが出来ればと考えている。

 

 

なお、このレースで最も高く評価されるべきは2着のダノンザタイガー。

誰がどう見みたってこの馬が一番強い競馬をしたのは明白で、次走単勝1倍台前半でも逆らうべきではないだろう。

 

 

【評価】☆☆☆【☆3】

 

 

 

 

 

中京5R

2歳新馬《芝1200m》

 

 

【勝ち馬】プロトポロス

父 ウォーフロント

母 キャヴァルドレ(サンデーブレイク)

 

 

 

【血統】

父ウォーフロントはG2を1勝した2流スプリンター。

日本で言えばダッシャーゴーゴーのような競走成績を残したと思ってもらうのが手っ取り早い。

ダンジグの晩年の産駒であったことから、おそらくは繁殖として一定の期待を抱かれての種牡馬入りであったはずだが、生産者のその淡い期待を膨らませて破裂させてその勢いで虹を架けて昇天させても足りないくらいの大活躍。

一躍時の種牡馬となった。

 

米国では名種牡馬としての地位を確立しており、後継種牡馬も多数。

日本にもデクラレーションオブウォーやアメリカンペイトリオットらが種牡馬として輸入されている。

肝心の直仔だが、過去に17頭が競走馬として輸入・血統登録されており、最も活躍したのが現役のフォッサマグナ。

欧州のトップ種牡馬にありがちな、日本で大活躍する産駒を出せないパターンなのかもしれない。

 

 

母キャヴァルドレはフランスのG3勝ち馬。

その父サンデーブレイクは日本生まれのアメリカ馬という変わり種。

母系には日本では馴染みの薄い名前が並び、未知の血統といった趣がある。

競走馬引退後は日本に輸入され、本馬が初仔となる。

 

 

 

【レース内容】

12.8 – 10.9 – 11.6 – 11.3 – 11.1 – 11.7

 

 

発馬は普通。

 

外2頭が速かったため行かせて好位での競馬。

じっくりと折り合って直線に向くと、GOサインに応えて一気に加速し楽勝。

時計的には平凡で、ラップ構成も特筆すべきものはない。

ただし、走りそのものに惹かれるものがあった。

なんと表現すべきか言葉が見つからないが、ピッチは普通だが滞空時間が少し長い不思議な走り。

手前を替えるとフラフラするなど粗削りな部分もあったが、この走りはちょっと気になる存在。

期待を込めて☆4評価。

 

 

【評価】☆☆☆☆【☆4】

 

 

 

 

 

 

函館5R

2歳新馬《芝1200m》

 

 

【勝ち馬】クリダーム

父 ハーツクライ

母 ブーケトウショウ(サクラバクシンオー)

 

 

【血統】

父はいわずと知れたトップサイアーハーツクライ。

ディープインパクト亡き後のサンデー系のエースとして君臨している。

今年のダービー馬もこの馬の産駒だ。

産駒はスピードや瞬発力こそ超A級とは行かないものの、持久力と底力で不足分をカバー。

成長力もあり、特化した武器よりも総合力で勝負するタイプが多い印象。

芝とダートも問わず活躍するため、ダート替わりも積極的に狙いたい。

 

 

 

 

母ブーケトウショウは日本の名門藤正牧場の一族。

 

ただし、競走成績・繁殖成績ともに見るべきものがなく、母系も昭和期に流行した古臭い逸品。

こんな血統が現代のトップサイアーと配合されることでどんな仔を生み出すのか、興味深いところである。

 

 

 

【レース内容】

12.0 – 10.9 – 11.2 – 11.8 – 11.7 – 11.9

 

 

好発から促されて先行態勢。

ロケットスタートを切った外が主張したためそれを見ながら2番手の競馬。

3角で前が一杯と見るや飲み込み、そのまま手応え十分に直線へ。

直線ではやや気合いを付ける程度にしか追われず、それでも後続を寄せ付けることなく完封した。

 

前3Fがそれなりに速かったにも関わらずラストこれだけ余裕をもって勝ち切ったのは能力の証明か。

今後の成長に期待。

 

 

【評価】☆☆☆☆【☆4】