2月19日(日) うまうまジェントル氏予想【フェブラリーS】

どうもおはようございます

 

うまうまジェントル氏です

 

今週は今年初めての中央G1レースとなるフェブラリーSが東京で開催されます
昨年はG1の予想がすこぶる調子が悪かったので、今年こそはの思いで頑張って
予想していけたらいいですね

 

ただ、本来主役になるはずのカフジテイク、サウンドトゥルーの主戦が騎乗出
来ないというハプニングがあったものの、剛健質実のアウォーディーがここを
使わずドバイに向かったため、今年も馬券的には見ごたえのあるレースになり
そうです

 
日本のダート競馬で初めてG1認定されたこのフェブラリーSですが、実はその
歴史は決して古くはないのです

 

ウイニングポストファンには有名なアンドレアモンの勝ったフェブラリーSが
実に第2回であるということを踏まえると、過去のフェブラリーSの勝ち馬な
どは今の競馬ファンにも明るい馬ばかりで少々味気ない気もするのが実情と
言ったところでしょうか

 

G1昇格自体がちょうど私が競馬を始めた1997年と随分新しいこともさながら、
元は1984年に一介のG3のハンデ重賞として開催された第一回フェブラリーSで
すが、

 

競馬には、レース名は同一のままでも時代時代で役割が全く違うレースが数多
く存在することは皆さんご存じですよね

 
例えば、短距離G1の高松宮記念などは、つい最近まで中距離のG2レースで
ありましたし、今はダービー開催日のおまけ的なイメージしかないG2のハン
デ戦である目黒記念などは、戦前は濠抽混合と呼ばれる国内屈指の大レース
だったことは有名です

 
レースの役割と言えば今週開催される京都牝馬Sも、昔はこんな時期ではなく
エリザベス女王杯(ビクトリアカップ)の前哨戦として開催されており、(古馬
も出走可能であったが)多くの3歳馬が京都牝馬S(当時は京都牝馬特別という
名称)を叩いて本番のエリザベス女王杯に向かっていました

 

先週お話したタカイホーマもご多分に漏れず京都牝馬特別をステップに本番に
向かっていたりします

 

日本競馬がグレード制を敷いてレース体系を整備したのが1984年、その一年
前に3歳限定のエリザベス女王杯のトライアルレースとしてローズSが開設さ
れたと共に初春の京都競馬での古馬牝馬限定に移動という歴史がこのレース
にはあるんですよね

 

つまり、今から34年前、秋にエリザベス女王杯の前哨戦として開催されたのが
最後の京都牝馬特別ということになります

 
その勝ち馬のお話でも今回はしましょうか

 
その名はミスラディカル

 
父はレックスレンジャー、母はマリーンターフ

 

父のレックスレンジャーは、アメリカの条件馬として特に実績もなく日本に
種牡馬として輸入された馬で、青森県で5年間種牡馬をしていたのですが、
このミスラディカル以外は全くと言っていいほど有名な産駒は出ていません

 
当時は日高全盛の時代で、馬産の中枢は既に北海道に移っており、青森や千
葉、鹿児島と言った古くからの大馬産地は僻地として細々と馬産を続けるの
みとなっていた以上仕方がなかったのかもしれませんね

 
レックスレンジャーの父ボールドビルダーは、名種牡馬ボールドルーラーの
仔で、ホーソーン競馬場の名物レース、ホーソーンGCHなどを勝っており、

 
母父のサマータンはかの名伯楽フェデリコテシオが育てた名馬テネラニ
(リボーの父)の仔で、現役時代は2冠馬ナシュアのライバルとして何度も僅
差の名勝負を繰り広げた知る人ぞ知る名馬であったりします

 
母のマリーンターフも現役時代はたいした実績もなく、父母ともに地味な馬
であったミスラディカル

 
母父となるフィリュースは仏ダービーを制しており、フランスの戦前最強馬
であったファリスの仔で、日本での代表産駒では、ハリウッドターフクラブ
賞にて、スピードシンボリとリキエイカンを破ったことで知られるニューキ
ミノナハが昨年映画のお陰か一躍有名になった(はずw)

 
田中良平厩舎に入ったミスラディカルであったが、デビューは3歳3月のダート
未出走戦(結果は勝ち馬から1秒9離された4着)と、血統的にも厩舎的にも
当初は恐らく大きな期待はされていなかったのでしょう

 

ただ、それ故にこの馬を語る上で避けては通れない人物がいます

 
実はこの田中良平師、昨年亡くなった田中章博調教師の父なんですよね

 
田中章師と言えば一番有名な馬は恐らくユウトウセイだと思うのですが、デン
シャミチやモチと言った珍名馬主小田切有一氏の馬を多く預かっていたことで
も知られています

 

そして何を隠そう、この父の管理馬ミスラディカルも馬主は小田切有一氏な
のです

 

『小田切なのに普通の名前やん』

 
と若い競馬ファンは驚くかも知れませんが、昔は小田切氏も普通の名前を馬に
つけていたことは有名で

 

小田切氏が馬主として初めて持った馬が、福永洋一落馬事件のせいで変なG1馬
よりも有名になってしまったマリージョーイ(重賞も勝ってるんですけどね)で
あるように、決して珍名馬ばかりではないことはそれを見れば窺い知れると
思います

 

そして、そんな田中良平厩舎に所属していた当時29歳の何の実績もない冴えな
い騎手がこの地味な血統馬ミスラディカルの主戦を生涯務めることになるので
すが

 
その男は後に騎手としても小田切氏の馬でG1を勝ち、後に開業する調教師とし
ても初G1を小田切氏の馬で勝つこととなることはその時は誰も想像だにしな
かったはずです

 
実はこの男こそが、今や栗東の名調教師となった音無秀孝その人なんですよね

 
昨年田中章師が亡くなったとき、例外的に他厩舎の馬房を増やして一時的に田
中厩舎の馬を預かるという措置を取ったのですが、その時の預かり先が音無厩
舎だったのは、そのような縁を配慮してのものだったのでしょう

 

実はこの音無師、一部では日本で一番下手な騎手とまで揶揄されたのは有名
で、事実クラシックを勝ったことのある騎手で最も生涯勝ち鞍が少なかったり
します(1212戦84勝)

 

ちなみに音無師は騎手時代、たった84勝の勝ち鞍の中から、重賞勝ちをオーク
ス含む6勝も上げているのですが、その内4勝がこのミスラディカル
※ちなみにオークスを勝ったノアノハコブネを含め、全て田中良平厩舎の馬

 

そんな地味だけど情に熱い調教師と、当時新米馬主だった小田切氏、そして日
本一下手な騎手が、どうしようもない血統の青森産馬で重賞を4つも勝つのだ
から競馬は面白いんですよ

 

それでは話を本筋に戻します

 

初戦を惨敗したミスラディカルですが、続く未出走戦をなんとか勝利

 
しかしその後は芝のレースをしばらく使うもなかなか勝ちきれず、春はクラシ
ックなどとは全く縁も縁もない競走生活を続けていました

 
馬に兆しが見えたのが芝を使い初めて4戦目の野苺賞

 

既に春の大一番であったオークスの翌週だったのですが、阪神のマイルをリー
ゼングロスの桜花賞よりも1秒以上速い時計で走破し、力の片鱗を見せ始めま
した

 

勝ち馬とは時計差無しの2着ではありましたが、勝った馬は後に牝馬の身で中
距離の混合重賞を連勝するラブリースター

 

重賞でも通用するという力を見せ始めたミスラディカルは、次走の露草賞を1
番人気に応えて快勝

 
一躍上がり馬として秋の主役候補として名を連ねたミスラディカルは、その後
1戦したのち、秋に備えて休養に入りました

 

が、逆にその間にリーゼングロス、シャダイアイバーといった春のクラシック
ホースが夏負けで離脱

 
ライバルの自滅に取って代わるようにミスラディカルが秋の牝馬戦線の主役と
して押し上げられる形で台頭し始めたんですよね

 

世代レベルもここまでパッとしなかったこの年の牝馬戦線なら…そう思わせる
だけの力をここ2戦で見せている馬としてにわかに周囲は色めき立ちます

 
ですが、ここで大きな問題がありました

 
音無『29歳…騎手です、(主な勝ち鞍は?)特には…(重賞勝ちは?)ないです…
(G1?)駄目みたいですね』

 
そう、ここにきて誰もが思う疑問

 

 

『そんな騎手で大丈夫か?』

 
本来なら

 
『一番良いのを頼む』

 

 

と関係者内から騎手の乗り替えの話が出てきそうなものですが、弟子を育てる
信念を持った田中師と、音無を歳の離れた弟のように可愛がっていた小田切氏
に、音無を降ろすという考えは一切なくそのままで秋の牝馬戦線に向かうこと
となりました

 

 

『大丈夫だ、問題ない』

 

 

とイーノックばりの謎の自信を覗かせたまま、エリザベス女王杯の前哨戦であ
る京都牝馬特別に出走することとなったミスラディカルと音無秀孝

 

もちろん、当時はまだ馬も騎手も重賞なんて1度も勝ったことなどありません

 
メンバーもここに来てグッと強くなり、昨年のこのレースの覇者でエリザベス
女王杯を1番人気で挑んだオオシマスズラン、野苺賞で後塵を拝したラブリー
スター、その野苺賞で破れたものの、次レースを好時計で快勝してきたダニッ
シュガール、後に全競馬場重賞出走で話題となるヤマノシラギク、桜花賞の前
哨戦でリーゼングロスを破ったツキマリーなど、たかが牝馬重賞などと楽観し
ていられないようなメンバーが揃うことになります

 

しかし、内枠を引いたミスラディカルは早めに動くラブリースターをじっと見
る形で内で道中じっくり脚を溜めると、そのまま虎視眈々

 
直線に入ったヤマノシラギクが早めに抜け出そうとするラブリースターを競り
落とし、更に外から1番人気のダニッシュガールがヤマノシラギクに焦点を絞
って伸びてきた矢先

 
内から一緒になって上がってきた馬がヤマノシラギクを急追しました

 

ミスラディカルです

 

内でじっくり脚を溜めて余力は十分

 
びっしりと叩き合うヤマノシラギクとダニッシュガールを半馬身捕らえたとこ
ろがゴール版

 
このレースに限っては紛れもない音無の好騎乗と言えるでしょう

 

こうして、京都牝馬特別という勲章を手土産に、地味な青森産馬と日本一下手
な騎手は胸を張ってエリザベス女王杯に臨むこととなったのです

 
ただ、本番はここまで怪我で春のクラシックを棒に振ってきたビクトリアクラ
ウンがついに復帰

 

名伯楽稲葉師をして、『あのテンモンより上』と言わしめた器で、本来なら3冠
もあると思われていた馬で

 

戦績もここまでほぼパーフェクト

 
先週も話題にした、勝つと不幸になるクイーンCを制した後故障したビクトリア
クラウン

 
クラシックを棒に振った手前ここは負けるわけにはいかないとばかりに、関東
の牝馬前哨戦であるクイーンSを手土産に参戦してきました

 

結局エリザベス女王杯では、京都牝馬特別と同様先に抜け出そうとするラブリ
ースターを子ども扱いでもするように軽く抜け出したビクトリアクラウン

 

結局、猛追はするもミスラディカルは最後まで捕らえることはできなかった

 
結果は2着

 

後一歩のところで女王の座を逃したミスラディカルでしたが、その後エリザベ
ス女王杯の鬱憤を晴らすかのように阪神牝特、金杯を連勝

 
翌年も朝日チャレンジCを制し、牡馬に混じって混合中距離のG1戦線に出走す
るのですが、エリザベス女王杯以降は抜け殻になって全く結果が出なかったビ
クトリアクラウンに対して、ミスラディカルはその後も堅実に走り続け、最後
のレースとなった安田記念以外全て一桁着順にまとめています

 
その中には宝塚記念、天皇賞秋、JC、有馬記念といった、今の王道古馬路線を
1年の間に当時の牝馬の身でそのまま走っており、この馬のタフネスぶりがよ
くわかりますね

 

結局引退まで25戦したミスラディカルでしたが、その25戦全てで音無が手綱
をとりました

 
ビクトリアクラウンのその後の尻すぼみっぷりを見ていると結果的に一番悔い
が残るであろうエリザベス女王杯ですが、当時ミスラディカルに跨がる音無が
何の実績もなかった平凡以下の騎手だったのに対して、ビクトリアクラウンの
鞍上は牝馬の嶋田と言われ大レースをいくつも制した名手

 
もし、エリザベス女王杯の時、音無でなく例えば関西の武邦やら田原やら河内
やら名手と呼ばれる騎手がミスラディカルに乗っていれば、その着順は入れ変
わったのかもしれません

 

ただ、田中良平師と小田切氏のサポートがなければ、騎手としての実績も積め
ず、競馬界に血縁のいない音無がここまで調教師で大成したとは考えにくいで
すし

 

もし、音無が田中厩舎に入ることなく、ミスラディカルにも出会わなければ調
教師にもなれず、カンパニーやミッキーアイルは誕生していなかった可能性
すらありますね

 
つまり、ミスラディカルは大レースこそ逃しましたが、音無という本来は競馬
界に台頭し得なかった可能性すらあった男に立派な花道を飾ったと言うわけで


 
これは牝馬であるミスラディカルだから出来たことでもありましたし
馬としても馬主、調教師としてもホースマン名利に尽きることでしょう

 

そんな音無は今、外国人や地方騎手が席巻する中央競馬で松若という若い騎手
を自厩舎で育てようと奮闘しています

 
昨年、某一口会員がクラブに『松若を乗せるな』などと電凸をしてきたらしい
ですが、モラルやマナーのなってない一口馬主様の言い分なんて聞く必要もな
いです
※会員の電凸は今でも当たり前にあるそうですが、実際に規定ではNG

 

 

音無は、自分が今まで受けてきた義理と恩を下の世代に返す…それが競馬に対
する最大の恩返しでしょう

 
それが出来る熱い男であってほしいとうまうまジェントル氏は思うのでした

 

 

 

それでは今週のお話はここでおしまい

 
予想の方に参りたいと思います

 

 

よろしくどうぞ~

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

2月19日(日)

 

 
東京11R           フェブラリーS

 

 

今回出走馬に関しては散々能書きを垂れてきたので今更細かい解説は
必要ないだろう

 

結局は騎手頼みになることは間違いないが、コパノリッキーが刻む
ラップがどうなるかが焦点

 

今のリッキーだと1000m通過が60秒で13秒台を一回挟んでも厳しい
ことは間違いないのだが、それによって他の馬に影響が出てくる

 
もしも60秒を超えるような流れになると、カフジテイクなどは
まず届かないし、サウンドトゥルーなども地方競馬相応の位置
取りが要求される

 

自力を要求されない流れになるとベストウォーリアは少々厳しい
し、アスカノロマンが止まらない流れも考えられるはずだ

 

今回は、むしろどちらに転んでも良い様に自力を問われる流れと
瞬発力を問われる競馬どちらでも大丈夫なように単勝を振り分ける
ことが望ましいか

 
速いペースになったときのサウンドトゥルー
長いハロンで息の入らない勝負になったときのベストウォーリア
単純に左で逃げれば一番強いであろうアスカノロマン

 

この3頭で勝負したい

 

 

 
ベストウォーリア      4,000円
アスカノロマン       3,000円
サウンドトゥルー      3,000円